2026年の冬季オリンピックは、2025年2月6日から22日までイタリアのミラノとコルティナで共同開催され、史上初のダブルシティによる冬季大会となります。スキー、アイスホッケー、リュージュなどの多彩な競技を網羅しつつ、今回の大会は特に持続可能性を強調しており、その象徴的な始まりとなるのが、希望と団結の火を灯す「オリンピックトーチ」です。
「Essentialトーチ」の構造:内側から外まで「環境に優しいDNA」が満載
イタリアのデザイン鬼才カルロ・ラッティ氏率いるCarlo Ratti Associatiチームは、今大会のために「Essentialトーチ」と名付けられたトーチを設計しました。テクノロジー、デザイン、環境意識を見事に融合させたこのトーチは、冬季五輪史上もっとも未来志向かつサステナブルなトーチの一つと称されています。
従来の装飾的なデザインとは異なり、2026年冬季オリンピックのトーチはミニマリズムを採用し、オープン構造で火が生まれる様子を直接観察できる仕様。デザインが機能に奉仕するという理念を体現しています。
本体にはリサイクルアルミと真鍮合金を使用し、重さはわずか約1,060gで持ち運びやすさも抜群。外装にはPVD(物理蒸着)技術を採用し、光の加減で虹色のような反射が現れ、氷雪の下で輝くオーロラのような幻想的な印象を与えます。さらに、このトーチは10回以上の再利用が可能で、交換式の燃料カートリッジと共に製造ロスを抑え、環境に優しい価値を具現化しています。
キッチンから生まれる炎?革新的なバイオ燃料が2026年冬季五輪を照らす
カルロ・ラッティ氏は燃料システムにも革新をもたらしました。「Essentialトーチ」トーチ内部では、廃食用油、動物脂肪、農業副産物などから精製されたbio-LPGを燃料として使用。毒性がなくクリーンで、炎の色も伝統的な青ではなく自然な暖かい黄を呈し、人間味ある視覚体験を提供します。
グリップにはXL EXTRALIGHT®という環境配慮素材を使用。これは60%がバイオナフサ(bio-naphtha)から作られたポリマーで、イタリアのデザインが職人技と低炭素製造をいかに融合させたかを示しています。
日常に向けた未来の選択肢:サステナブルデザインがもたらす社会的責任
2026年ミラノ冬季オリンピックは、単なるスポーツの祭典ではなく、デザイン、イノベーション、社会的責任が交差する実験の場です。「Essentialトーチ」は2025年大阪万博やミラノ・トリエンナーレにも出展される予定であり、終了後はスイス・ローザンヌのオリンピック博物館に永久保存されます。
このトーチは、オリンピックの火の継承を象徴するだけでなく、人類と地球に対するデザインの優しさを伝えるものでもあります。デザインは単なる形ではなく、環境を守る責任を果たすこともできる―それは未来のライフスタイルの選択肢なのです。