混雑する都市の風景は、その華やかさを反映しながらも、忙しさや窮屈さ、息苦しさを人々に与えることがあります。日本の写真家安藤瑠美が撮影した《TOKYO NUDE》シリーズでは、東京の街角から人混み、車両、看板、電柱など「視覚的ノイズ」を取り除き、一瞬で東京を静寂で清潔な空間に変えました。まるで喧騒の大都会が無人の静かな空城に生まれ変わったかのようです。
岡山県、別名「晴れの国」出身の安藤瑠美は、写真家であると同時にプロのレタッチャーとしても活躍しています。広告写真の後処理で不要な要素を削除するのは彼女の仕事の一部です。《TOKYO NUDE》シリーズを撮影したのは、東京に引っ越してから東京の生活に適応できなかったためです。特に、人々の絶え間ない流れや情報の洪水が渦のように彼女を引き込む感覚に影響されました。そこで、東京がその「日常の衣」を脱ぎ捨て、最も裸の状態に戻ったら、何が残るのかを表現したかったのです。
東京の特定のランドマークを意図的に撮影するのではなく、偶然の場所を歩き、撮影し、東京の日常的な景観を削除して色調を調整しました。また、写真に雲や建物を追加し、ほとんど存在しない架空の東京を作り上げました。この後処理の過程で彼女は日本の伝統的な絵画である大和絵の影響を受け、平安時代や鎌倉時代の山水画を参考にしました。不要な線を減らし、調和のとれた色彩で東京に独特な幻想的な雰囲気を生み出しました。
安藤瑠美は「写真」という言葉が芸術、報道、広告の分野で使われていても、それぞれで解釈が異なると述べています。広告の世界では、写真は過剰に美化され、芸術の世界では、写真はやや曖昧で理解しづらいことがあります。彼女が創作する際には、画面の雰囲気、光沢、模様の質感を最大限に保ちながら、広告と芸術の重なる部分を取り入れています。「後加工を必要以上に行わず、あたかも既に後加工されたような写真を直接撮影することで、完全に仮想的な世界を作り出す必要はない」と彼女は語っています。
安藤瑠美が捉えた新しい東京の姿に興味がある方は、ぜひ公式サイトやInstagramで、静寂な雰囲気に満ちた東京をご覧ください。
All photos credit by 安藤瑠美